疲れたときって、人ってどうするんだろう。
F[エフ]
久しぶりに雛森と話せたのはいい。
でもやっぱ、全然だめそうだった。
顔つきも細くやつれているし、寝てないのだろう、目元にはくっきりとクマはできていたし。
体はふらふらしてた。
そして、当たり前かもしれないけど、藍染の裏切りだけは認められてないみたいだった。
首謀者なんて、そんなはずないって。
どんなに本人に刀突き立てられても、それだけは信じることができないで。
市丸の野郎に唆されたんだって。
あいつが、去り際に言った言葉も何も聴いてないから。
まだ、尊敬しているんだろうか?
たぶん総隊長に聞かされてはいるんだろうけど、心は追いついていない。
というより、追いつくはずがなかった。
それはわかっているんだけれど、やっぱりショックだったのは俺も同じだ。
大切な存在があんなに病んでしまって、それで総隊長に気絶させられるところを見せ付けられて、
長く、長く一緒に過ごした幼馴染み。
・・・凹まない、わけがない。
松本も、気を使ってなのか井上とどこかに行ってしまった。
ありがたい。
でも、複雑な気分なのも確か。
俺だって、人と一緒にいたいときだってあるんだ。
それをわかって松本はどこかに行ったのかもしれないけど。
松本は、人のことちゃんと考える奴だから。
でも、そうされたって気分が晴れるわけではない。
井上の部屋で、一人でぼーっと座り込んでしまう。
疲れた・・・。
藍染と市丸が共犯だったこと、破面への対応。
最下級なのにあれだけてこずった戦い。
限定解除しなければそいつらでも倒せなかった。
井上に傷は癒してもらえたけれども。
そして今の雛森を見て。
疲れがどんどん湧き出してくるように感じた。
奥底から井戸水が湧き出してる感じ。
そのまま目を瞑って、ぼうっとした。
動かなかった。
少し時間がたって、目の前のモニターからまたざざっという通信音が響いた。
また、総隊長からかな・・・。
「はい、こちら現世日番谷。総隊長、何か?」
「・・・・・・」
「総隊長?」
うっすらと目を開ける。
「日番谷。総隊長って誰だ?」
「朽木・・・。」
いきなりモニターの前に白哉のアップ。
何でこいつが目の前にいるんだ?
しかもこのモニター、総隊長室からじゃないと今はつながらないはずなのに。
そう思ってよく見てみても、総隊長室。
「何でお前、総隊長室いるんだよ!?許可は?もらったのか!?」
「いや?もらってないが。」
総隊長が、そんな簡単に許すわけない。
「いいのかよ!?勝手にっ・・・」
思わず叫んでしまった。
頭はごちゃごちゃで、そんなことしか言えなくなる。
「・・・冬獅郎、お前、大丈夫なのか?」
「え・・・?」
「先ほど、藍染のところの副隊長に会ったんだろう?」
「な、んで知って・・・」
「そりゃ、まぁな。」
「だからって何でだよ!」
憎まれ口ばっか叩いているけど、実はとても嬉しい。
心の中のもやもやが一気になくなった感じがした。
溢れてきていた何かが止まってような気がする。
白哉の顔見て、声を聞いて、・・・安心、した。
だけど。
「お前のことがちょっと心配になってわざわざ総隊長室に忍び込んだんだが・・・
必要なかったようだな。元気そうだし・・・通信、切るか?」
「ばっ・・・何言ってんだ、切るなよ!」
「そうか。」
思わず本当のこと言ったけど、通信が切られていないことに安心している。
「そういえば、そこ大丈夫なのか?総隊長室は?」
「あぁ、大丈夫だと思うぞ、総隊長はこれから技術開発のほうへ視察だって言ってたから。」
「・・・本人がか?」
「いや、恋次に調べさせた。」
相変わらず苦労させてるな、副隊長に・・・。
「妹とはどうだ?」
「ルキアのことか?元気だ。」
「優しく、してるか?」
あの一件以来、優しくしてはいるはずだ。
「あぁ、そのつもりだ。お前にも優しくしてやっているつもりだ。」
ぬけぬけとそんなこと言われて、顔が赤くなってしまったような気がする。
「どうしたんだ、真っ赤だぞ、日番谷。」
「・・・うるさい。」
「はは。」
白哉は、いつも嫌なところで日番谷とか呼んできて嫌みったらしいけど。
でも、ほっとするのも確かだ。
妹にも優しくしているようで、それはそれで嬉しい。
俺にも優しくしてくれているからそう思うんだろうけど。
で、だらだらと話をして。
楽しくすごせて。
あっという間で。
「げ、総隊長帰ってきたみたいだ、じゃあな、冬獅郎。」
終わりの時間は、あっという間だった。
ずいぶん話し込んでいたようで、もう帰ってきたようで。
「また、会うこともあるだろう。体に気をつけてな。」
「あ、白、・・・」
俺が白哉の名前呼ぼうとした途端、ざざーっと横線だらけになる。
でも。
心が、軽くなった。
楽になった。
松本と井上も、帰ってきたみたいだ------。
FIN.
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あのときの雛ちゃん見たあとのひっつんがかきたかった。
てか、むしろその時のこの二人のいちゃいちゃぶりがかきたかった。
ひっつんの心の癒しは、当然白哉さんだと思います。
なかなか意地っ張りで連絡がとれないひっつんだけど、それを察して連絡とってくれる白哉さんが素敵かなって思って。
兄としても恋人としても白哉さんは理想ですよねぇ・・・!!!
ここまで読んでくださってありがとうございました。
06.10.15