吉なのか、凶なのか・・・。
カクメイV
「・・・俺は、日番谷冬獅郎ってんだ。お前は?」
「・・・桃。」
そのとき、彼女はなんとなく苗字を言えなかった。
ただ、その雰囲気が桃にそうさせた。
それが正しいのか誤っているのかはわからなかったけれど。
「・・・貴方は、なぜ私を助けてくれたの・・・?」
「あ?」
「っううん、ただ、追われていたから助けてくれたみたいだったから・・・」
「・・・あいつら、宮殿に仕えてるやつらだろ?」
「え・・・?」
そんなこと言われても、全然わからない。
そりゃ、自分を追いかけたんだから自分の住んでいるところに勤めている人たちだろうけど、
何で目の前の少年がそんなことわかるのか。
それで、なぜ助けてくれるのか。
「何だ、知らないのか?あいつら、王の住んでるとことに仕えてる兵隊だ。
どうせお前も何かしたんだろ?」
「あ、の、何かって・・・?」
「つまり・・・石投げたりとか、そういうこと。」
「ううん、そういうことは・・・してない、けど。」
「じゃあ何で追われてたんだ?」
そんなこといわれても、なんていえばいいのか。
脱走してきたなんて言えない。
それに、目の前の彼はあまり護衛たちをよく思っていないようだ。
「・・・たぶん、勘違いか何かじゃないのかな・・・?」
「っちっ・・・あいつら、こんな小さな女の子にまで手出しやがって・・・!」
「で、でも、貴方のおかげで逃げられたし・・・。
・・・ありがとう。」
「っあ、あぁ、いや・・・」
「もう、そろそろ、行くね、私。助けてくれてありがとう。」
「行くって・・・お前、どこ行くんだ?」
「え?特には・・・。
ただ、ちょっと見たいものがあって。」
「見たいもの?」
「その・・・今まで、あんまり外に出してもらえなかったから、外の世界を見たいの。」
そのとき、私は単にそうとしか言えなかった。
さっきから、自分のことを言えない。
何でだろう?
目の前の人は何をやって過ごしているんだろう・・?
「今は、危ないぞ?早く家に帰ったほうがいいんじゃないか?」
「でも・・・せっかく外に来ることができたのに・・・」
「・・・家出か?」
「そう、じゃないけど、その・・・。」
さっきから少年は外は危ないという。
目をみればわかる。
言っている事は本当だって。
「貴方は、家はどこなの?」
桃は思い切ってそう尋ねてみた。
「俺か?俺はもう両親はいない。
仲間と住んでる。」
「あ・・・ご、めんなさい・・・。」
「いいさ。ずっと前のことだし。ここにきて、もうずいぶんたつんだ。」
「そうなの・・・。」
「お前はどっちの方向に住んでいるんだ?よかったら、送っていくぞ?
それに、今はあまり出歩かないほうがいい。殺されても文句言えねぇからな。」
その言葉は、初めて聞いた。
殺されても文句言えない。
夢とあまりに違ったから。
黙り込んでしまったらしい。
「おい、おい桃、どうした?」
彼が声をかけてきた。
「あ・・・」
「ずっとぼーっとしてたぞ、どうかしたのか?」
「いえ、ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、その、自分の考えていた外とはあまりに、違うので・・・。」
「・・・全然外に出たことなかったんだな・・・。」
「うん・・・。」
「・・・まぁとにかく、帰ったほうがいいぞ。途中まで送っていくから。」
「・・うん・・。」
そうまで言われてしまうと。
でも、彼にまだ自分が何なのか言っていない。
帰るところは、ひとつしかない。
王宮-------
「あの、この国の王様は知っている?」
静かに、そう聞いた。
考えてみれば、国民なのだから王を、父を知っているのは当然だろうに。
「あぁ、知ってる。
あいつのせいで、俺たち貧しいんだからな。」
「・・・っ」
何か言いたいのに声も出ない。
私、は・・・?
私も、父様と、同じ・・・?
もしかして、国民は皆私のことも・・・?
私は、父の血を継いでいるから。
目の前は真っ暗だった。
外が見たいなんて思わなければよかった。
したって仕方のない後悔が後から後から湧き上がってくる。
自分が外に出たいと思ったことに対してだけでなくて。
何も知らずに過ごしてきたこと。
満ち足りてそれが当たり前だと思ってきたこと。
この国はまだ美しいと思ってたこと。
全て、すべて。
その後の記憶は、ない。
気づいたら、まだ彼は目の前にいてくれた。
どうするかは、わからなかった。
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えーと・・・第三話です。まだまだ行くつもりなかったんですが、このまま雛ちゃんが皇女だということをばらしてしまいたいです。
悩み中ってことでここまででとめることにしました。
いつもそうな気がする・・・(汗
このまま、お前どっかで見たなーとかにしたい。
当初の予定ではまだまだ先だったのに。
どっちにしてももっと文書くのうまくなりたいです。
読んでくださってありがとうございました。
06.3.19