同じだったから。
W
-----side T-----
俺とあいつは全然話したりすることもなかった。
入ったとき既に隊長。
必須条件と言われている卍解も、俺にはたやすいものだった。
すぐに認められ、隊長になる許可が下りた。
普通は、誰かの下について、鍛錬するものだけど。
でも、だからこそ親しくなれたんだろう。
他の隊に入っていたら、それこそ名前をこちらだけ知っているだけになっていただろうし。
もしどこかに所属されるなら、雛森のいる六番隊に入りたかったけれど。
あのヤローに隊長だって知られたかったし。
ま、同じ隊でなくてもその儀式あるし別によかった。
これでシロちゃんなんて呼ばせねーぜとそれなりに張り切ってた。
それに、入ったら入ったで満足していた。
俺がこんなだからって、松本は俺を軽んじるような言動はしてこなかった。
隊員たちも普通に接してくれた。
まぁ、そんなこと気にするほうでもないけど。
それに、浮竹はかなり優しくしてくれた。
・・・あいつのはそれこそかなりだ。
いつも俺を見かけると寄ってきて大量の菓子を押し付けられてさわやかに去って行ってしまう。
・・・ん?あいつがさわやかなのか?
でも彼もちゃんと俺を一人の隊長として接してくれたから。
そこまで嫌な気はしなかった。
あいつと、それと京楽隊長と三人で調べ物だってした。
悪い気はしなかった。
本性を知った今では殺したいという気しか起こらないが、藍染も。
そんな中、俺はどうしても苦手なのがいた。
十二番隊もそうだが、あれは・・・。
総隊長も少し苦手だった。
あと・・・六番隊隊長。
見た目は普通だし、貴族だからって特に思うこともない。
初めての隊首会でも、朽木隊長に何にも思わなかったのに。
何だか、普通だと思ったのに苦手なんだ。
いつも無口で。
流魂街から妹として一人拾ったという話を聞いて、そんな嫌悪を感じる相手ではないはずなのに。
俺もそこ出身だし、貴族でもそんな人を拾ってくれるんだとちょっと色々思った。
俺は流魂街では治安のいいところに住んでいた。
それだけでよかったけど。
なんか、あいつの前に立つと、・・・。
そんなことを思ったまま、俺の隊長としての日々は始まった。
「・・・おい。」
朽木の声。
俺は話したこともない。
そのときは、まさか俺に声かけてるなんて思わなかったし、そのまま歩いてた。
かなり仕事もたまってたし、ほとんど松本がやってくれるとはいえ、自分もやらなくては。
・・・今から考えると言い訳か・・・?
「おい、日番谷。」
今度ははっきり俺の名を呼んだ。
呼ばれているのは俺だと知って、振り向いた。
「ん?」
俺は、年上の隊長達にそんな敬語なんて使っていなかった。
入ったときは敬語、使っていたっけ・・・?
使っていなかったかな、俺のことだし。
でも、はじめはそれなりに緊張してた気もするし・・・。
隊長になった後は全然だった。
席が同じだし、それは何とも思わないけど。
だから、そのまま振り向いた。
てか、年上なんだから「はい」って言えって言われそうだ。
これが藍染だったらな。うるさいやつがいるしな。
今はどうなんだろう・・・?
朽木も、気にした様子でもない。
というより、気にするやつなんて雛森だけだったし。
「お前の隊は今度の任務、お前が行くのか?」
そのときの集まりは任務の話。
たまに、あるんだ。
普段は地獄蝶でだけど。
ま、そういうときは他にも何かあること多いけど。
色々。
「・・・あぁ、今話聞いてそう思ったが?」
・・・そんな、いちいち隊員に言って行かせるような任務じゃなかった。
そういえば、六番隊との合同って言われたな。
総隊長に。
・・・忘れてた。
「こちらも、私が行く予定だ、よろしくな。」
「あぁ。」
「・・・副隊長やらに行かせないのか?」
「・・・アンタもな。」
「恋次とは、ずいぶん仲良くしているみたいだったからな。」
「・・・え?」
「よくお前と松本の話してくるが?」
「あぁ・・・松本とは仲いいみたいだけどな。
・・・でも俺はそこまで。松本に振り回されてるだけだから。」
そのとき、目の前の顔がふっと緩んだ気がした。
「・・・ま、私もだがな。」
「・・・阿散井に振り回されているのか?」
「・・・いや?」
「でも、・・・何かしら思うこともあるんだろ?」
「あぁ、まあな。」
こんなこと、六番隊隊長が言うなんて意外だった。
俺だって知ろうとしたことないけど。
「どこの隊も、似たようなものか。」
「あぁ、たぶんな。」
「俺は、松本に比べて阿散井のほうが何ていうか・・・真面目だと思ってたけど。」
「そうか?」
「あぁ、ウチなんか何かあれば酒盛りしてるしな。
・・・書類とかは大体やってくれるからいいんだが。」
「・・・似たようなものだ。」
「そうか?」
「ルキアのことで、やはり意識されてるしな。
・・・何かあれば、・・・」
「そうかもな。」
さっきから短い会話が続く。
でも、不思議と止まることはなかった。
居心地悪いなんて感じなかったし。
話題がないわけでもないし。
こんな話、朽木隊長が自分からしてくるなんて。
俺は、その時驚いていたんだろうか・・・?
「・・・じゃ、よろしくな。」
「あぁ、明日な。」
そうだけ言って、朽木隊長はそのまま歩いていく。
何だかそのとき、俺はその背中が見知ったもののような気がした。
ずっと知っている人の背中に感じてた。
今まで全然知らなかった人なのに。
まったくだったのに。
また違う感情が浮かんだような、そんな気もした。
でも、初めてだったからわからない。
今まで、任務楽しみなんてことなかった。
でも、そのとき俺は早く明日が来ないかと思ってた。
早く明日が来て、二人で、
朽木隊長と。
仕事して。
そのときから、俺は朽木と話せるようになっていったんだ。
あのときの任務内容は実は覚えていない。
俺はあのとき初めて、任務に集中できなかった。
朽木の足を引っ張りっ放しだった。
・・・ような気がする。
でも、楽しかったことは覚えてる。
足引っ張るっつったって、へまはしなかった。
へまなんかしてたら、朽木と話せなくなるかもしれないから。
向こうはなんと言っても貴族だし。
そういうこと、気にしそうだし。
何もわかってない。
それがこんなにあせることだったなんて。
いつか。
でも、今は。
------「どうした、日番谷、ぼーっとして。」
「あ、あぁ、いや、何でもない。」
FIN.
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白哉さんと日番谷くんが一緒になった話書きたかったから・・・っ!
この二人、全然接点ないようで実はあると信じています。
白哉さんだって、日番谷くんのこと大好きだよ。
日番谷くんも、ちょっと気になっているわけですよ。
書きはじめたら、すごい勢いで進んでしまいました。
絶対この二人はいいカップルになるって信じてる。
不器用二人だから進展はないかもしれないけど信じてる。
こんなマイナーなのをここまで読んでくださってありがとうございました。
・・・もっとうまくなりたいです。
06.3.18