私は、何を大切にしたかった・・・?
M
何も知らずについた朝食の席。
いつもはそこにいるはずの人の姿がなかった。
すっとそこに通り過ぎた使用人に聞こうと思ってためらった。
・・・寝坊かもしれない。
この家に引き取ってからそんなことなかったけど、私はそう思いたかった。
冷徹で、妹のことなど何も考えていない当主---------
一部の信頼している使用人以外の使用人が私のことをそう言っていることなど知っている。
だからこそ、聞けないのだけど。
あとでこっそり聞こうと思った。
食事が終わっても、姿はない。
出かける時間になっても気配すらない。
送りに、一番信頼してるのが来た。
「おい。」
「はい?」
初老の、ずっと私のことを見てくれてきた人。
「ルキアが今日姿が見えないが・・・お前は何か知ってるか?」
「え?聞いていらっしゃらないんですか?」
「何を?」
目の前の人は、自分が知らないルキアのことを知っている。
そう思ったとき、浮かんだ感情は何だったのか------
「ルキア様は、昨日現世での駐在任務を受け、一ヶ月留守にするとのことです。
私のところにきましたので、私は白哉様はもうご存知かと思っていましたが・・・」
・・・初耳、だ。
「いや、私は何も聞いていない。」
「そうなんですか?てっきり、白哉様にも報告されたのかと思っていましたが。」
ルキアが、私には何も言わずに現世に行った・・・。
何故。
そんな表情をしていたのだろう。
次に言われたことは。
「白哉様。もう少しルキア様にお優しくなされませ。」
「何?」
「陰でとても可愛がっていらっしゃるのを私は知っておりますが、あれではルキア様も中々話もできないでしょう。」
幼少の頃から自分を知っている目の前の人は、どんどん意見してくる。
だからこそ、大切だけれど。
「・・・そうか?」
「他の使用人たちも、あまりの冷たさを噂していますし・・・
ああも邪険に扱うこともないと存じますが。」
「・・・可愛いなんて思っていない。
定例集会に間に合わないから、行ってくる。」
そういって、ばたんと扉を閉めて、だんだんと足音を立てて、私はその朝家を出てきた。
そんなことしたら、その通りだと認めているようなものだとわかっているのに。
いつでも、素直になれない。
第一、大切にするのなんて久しぶりだから大切にするやり方を忘れてしまった感じだ。
いや、緋真は、満足していたんだろうか・・・?
優しくしていたつもりだったけど。
どう思われていたんだろう・・・?
「白哉っ!」
着いた途端に名前を呼ぶ声。
あの声は・・・浮竹だ。
「何だ?」
「何だって・・・お前、妹今日いなかったのに何も思ってないのか?」
「さぁ・・・いなかったかな。」
なぜ、浮竹がルキアのこと知っているんだ・・・?
・・・そういえば、ルキアは浮竹の隊に所属していたんだっけ・・・。
「心配じゃないのか?妹だぞっ?」
「・・・たまたま姿が見えないだけだと思って気にも留めなかったが。」
それは、嘘だ。
ずっと心配して、朝食なんて全然喉通らなかったし。
そんな状態見せるわけにはいかない。
「・・・まぁいい。あれは、今日から現世での駐在任務で昨日たったからお前にも知らせておく。」
「・・・なぜ兄からそんなことを言う?」
「朽木が、いや、ルキアが、お前には知らせずに発つって言ってたから。」
「なぜだ?」
なぜ、ルキアは私に知らせようとしなかった・・・?
「あいつにも色々あるんだろ。
・・・もう少し、話を聞いてあげたらどうなんだ?白哉のほうこそ。」
・・・また。
今朝聞いたのと同じことを言ってきた。
今朝は、優しさを見せてもいいのではと言われた気がする。
・・・そんなに優しくないように見えるのか・・・?
「・・・そんなこと、兄が知ったことではないだろう。
忙しいので失礼する。」
もっと聞きたいことがあったけど、浮竹に背を向ける。
でも、次に妹に会うときに刀を向けることになるなんて、私は思ってもいなかった・・・。
FIN.
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白哉さんのシスコンぶりを書きたかったんだけど、微妙になった。
毎回微妙だよ・・・。
とりあえず、ファンブックネタで何か書いてみたいと思った結果がこれです。
ルキアの言葉聞いて、浮竹隊長が浮かない顔してたからこれがいいと思ったんですが。
白哉さんはどんな気持ちで次の朝を迎えたんだろうと思うと胸が痛いです。
もっとうまくなりたい・・・。読んでくださってありがとうございました。
06.4.2