一番意外に思っているのは、たぶん俺だ。
















共。
























今度の有給、俺は白哉と一緒に外に出かける。
現世に仕事に行くのではない。
虚退治でもない。
斬魄刀は持っていくけど、抜くつもりはない。
二人で行くから、白哉もいるし。
認めたくないけど、俺より強いから。

初めてだ。朽木と一緒にどこか行くなんて。
この世も、広い。
現世と同じで、癒される施設もある。
俺たちは、明日から二泊の予定で、温泉に行くんだ。
誘ってきたのは、朽木だった。



「おい、日番谷。」
「んー?何か用か?」
「お前、まだ有給残ってるか?」
「あぁ、確かたくさん残っていたと思うけど。」
「ま、最近働きづめだったからな。」
「朽木も残ってるんだろ?」
「あぁ、たくさん、な。」

一瞬の沈黙。
その後。


「日番谷、空いているなら明日から二日、温泉にでも行かないか?」

・・・何か、背に感じた。

「・・・なんでそんなこと突然・・・」
「いや、ちょうど宿泊券をもらったのでな。
お前が行けるなら一緒にと思ったのだが・・・」
「・・・こんな時期にそんなことしていいのかよ?」

こちらでは、ついこの前藍染と市丸がよからぬことをたくらんで、そして行ってしまっていた。
そんなときに。
朽木も、全てを阿散井に任せるわけにもいかないだろうに。
うちも、人のこと言えないけど。
・・・松本にまかせっきりだ。


「まだ、あいつらも動かないだろ。
第一、崩玉はもっと時間をかけなければ働かないと総隊長も言っていた。」
「・・・そうだけど・・・」
「じゃあ、いいではないか」
「・・・でも・・・っ」
「ん?何だ?浮竹のほうがいいのか?」
「何で浮竹の名が出てくるんだ・・・?」
「・・・ずいぶん可愛がってもらっているようではないか。」




可愛がってって・・・。




「そんなんじゃねえ!」
「そうか?そう見えるがな。」
「あいつが勝手に寄ってくるだけだっ!」
「でも嫌がってはいないのだろう?」
「そりゃ、あいつには結構世話になってるし、いい人だし、信頼してるし。」
「・・・好きってことか?」
「んなんじゃねえって言ってんだろっ!」
「そうか?そうは見えないがな。」



何でこんな話題にムキになってるんだろう、俺・・・。



「・・・で?行くのか?行かないのか?
仕事のほうが大切か?」

改めて、同じこと聞いてくる。

「・・・わかった。行く。」

だ、だって、目の前の人も行ってほしそうだったし。
俺だってたまには休暇とりたいし。
一日二日、松本なら大丈夫だろうし。
仕事は・・・いっぱいあるけど。
雛森だって、意識は戻ったし・・・。

そこまで考えて、言い訳めいたことばっかり考えてる自分に気づいたのはかなりあとだった。




俺はその日、待ち合わせ場所に向かった。
いつも、いる場所。
いつも働いているところが目の前だ。
もう、何週間、何ヶ月ってここにそのまま入っていったけれど。
今日は、そのまま。
このまま、違う方に向かう。
何だか、本当に久しぶりだった。

「日番谷。・・・待ったか?」
「いや、さっき来たばかりだけど。」
「そうか。」
「あぁ。」
朽木の視線が、俺の身体の下のほうに落ちて、俺を一瞥して。
「お前、何も持ってないじゃないか。」
「え?何かいるのか?」
だって、黒装束できてるから、着替えもいらないし。

「何か絶対にいるわけではないが・・・手ぶらとは思わなかったのでな。」
「いいんだよ、このほうが楽だし。」
「・・・子供だな・・・」
「何言ってんだよ。」
「いや?じゃあ、行くか。」














そのまま、温泉地に行って。

帰ってきた途端に仕事だったけど、よかった。

行って、よかったと、思う------。














FIN.
























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甘々な白ヒツを書きたいと思った結果がこれでした。
どうなんだろう?何だか白哉さんが強い。
ひっつんがわがまま言って白哉さん困らせているところを上手に書いてみたいです・・・。
これじゃただのじゃれあいだよ(沈)
ま、まぁいいのです、甘々が目標だったのですから。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
06.4.14